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  お口のお話 1月号 離乳食や指しゃぶりが子どもの口腔内に与える影響

お知らせ

お口のお話 1月号 離乳食や指しゃぶりが子どもの口腔内に与える影響

お口のおはなし

お口のお話1月号

こんにちは。

2024年になりました。本年もユナイトみよし歯科をどうぞよろしくお願いいたします。

2024年最初のお口のお話は、離乳食や指しゃぶりが子どもの歯や口腔機能の発達にどんな影響があるのかについてお話していきます。

 

離乳食期は大切な学習の期間

赤ちゃんは、液体から固形物へと離乳食を進めていくうちに、食べ物を見て楽しみ、口に含んで咀嚼し嚥下することを五感を使って学習していきます。この発達は、食の問題だけではなく、構音、呼吸、顎顔面の成長発育、ひいては全身の発達、心の発達にまで影響を及ぼします。離乳食期は、そのような意味で人生のなかでとても重要な役割を持った時間と言えます。しかし、それは歯の萌出状態や、口腔機能の発達状態に合わせて進めていかないと正しく習得されないおそれがあります。

離乳食期は吸啜・乳児型嚥下から咀嚼・成人型嚥下へと発達していくための学習期間です。それぞれの時期の目標をクリアしながら、心身の発達とともに頂上まで目指す作業の時間となります。

 

離乳食には何が求められる?

 

離乳食を与える必要性や役割として、以下のことが挙げられます。

 

  • 成長にともない、母乳やミルクだけでは不足する栄養を補う。

 

  • 食べることに興味を持つ。食べることの楽しさを体験する。これらにより精神発達を促す。

 

  • 咀嚼をはじめとする口腔機能や消化機能の発達を促す。

 

  • 生活リズム・食生活の基礎を作る。

 

現代の離乳食のポイント

①離乳食の開始や、アレルギー性食品の摂取を遅らせない

以前は、食物アレルギーを起こしやすい食べ物はできるだけ遅く与えたほうがよいとされていました。しかし、最近ではアトピー性皮膚炎など皮膚に炎症のある子どもは食物アレルギーを起こしやすいため、まずはスキンケアが大切であると指導されるようになっています。つまり、口から食べるより先に皮膚から体内に入ってしまうと食物アレルギーになりやすいのです。そのため、 離乳食の開始を遅らせることは、食物アレルギーのリスクを高めてしまうと考えられるようになりました。

 

食物アレルギーが心配な食材を初めて与える時は、単品で耳かき一杯程度から与えるようにする点は変わっていませんが、たとえばこれまで生後7~8ヵ月ごろから開始とされていた卵も、離乳初期の5~6ヵ月ごろから与えるように変わっています。すでに食物アレルギーの診断がされていたり、湿疹のような皮膚症状がある場合は、自己判断せず医師の指示に従ってください。

 

②離乳食開始後も摂取に影響がないように母乳・人工乳は与える

母乳・人工乳は、授乳リズムに沿って与えます。母乳を継続することについて以前より寛容になり、現在は、離乳食開始後も母乳は欲しがる量だけ与えてよいとされています。ただし、授乳のタイミングを離乳食の後にするなど、離乳食の摂取に影響がないようにします。欲しがるから、泣いたからと時間や間隔を開けずに与えると、空腹感がなくなるため、 離乳食が進まなくなる可能性があるので注意が必要です。

 

③ベビーフード活用の推奨

従来どおり、離乳食は手作りが好ましいとしながらも、負担を感じる保護者が多いことから、ス
トレス軽減の目的で赤ちゃんの月齢にあった固さ・味・調理法のベビーフードを利用することを推
奨しています。ただし、味や固さが子ども咀嚼機能に合っているのかを与える前に一口食べて確認
するなど、留意点も強調しています。

 

④離乳開始前に果汁などのスプーンで与える”練習”は必要ない

果汁に加え、イオン飲料についても栄養学的意識が認められていないことが記載されました。果
汁などを、与えることは、かえって糖分の過剰摂取につながります。
以前は「離乳準備期」としてスプーンの練習が言われていましたが、スプーンも自然となれるた
め、特に練習しておく必要はありません。

 

「食べる」ことは日常的なことであるため、口腔機能の基本となる”離乳食”ついて軽視されがちで
すが、口腔機能が十分に発達しなかった場合、食に関してだけでなく、構音、呼吸、顎顔面の成
長発育にさまざまな影響が表れてくることも知っておかなければなりません。それは、乳幼児期
だけでなく、成人期、老年期のQOLも大きく左右する問題です。

歯科衛生士 Y.K W.K

 

口腔への二次的な影響

指しゃぶりを継続していると、歯並びや噛み合わせなどの形態的変化だけではなく、二次的な影響が出てきます。口腔機能の異常にもつながり、口腔機能の異常がさらに形態的変化を悪化させるという悪循環のループを形成します。

たとえば、開咬(形態的変化)になると、上下の前歯の間に隙間ができるので、唾液や飲み物、食べ物がその隙間から漏れ出ることを防ぐために舌で隙間を塞ぐ動きが生じます。
一日に平均600回は嚥下すると言われていますが、嚥下するたびに前歯の隙間に舌を押し出しながら嚥下するとどうなるでしょうか?
舌は筋肉の塊であり、その筋肉の塊が隙間から出し入れされることで、さらにその隙間が広がってしまいます。
その上、垂直的な距離が増加するため、口が閉じにくくなり、嚥下時だけでなく、リラックスしている時や、ぼーっとしている時など安静時にも、上下の前歯の隙間に歯を置く行為が生じやすくなります。嚥下時ほど強い力がかかるわけではありませんが、弱い力でも長時間常に舌が隙間にあることで隙間を広げる力が働きます。

口唇閉鎖不全、口呼吸

上顎前突、下顎前突、開咬になると、上下の端に距離ができるため、口唇が閉鎖しにくくなります。(口唇閉鎖不全)
食事中も口唇閉鎖が難しいと、クチャクチャ音を立てながら食べることになり、口からぽろぽろこぼれたり、口の周りに食べかすがつきやすくなります。
その他、口が常に開いていると、鼻呼吸ができず口呼吸になります。
鼻呼吸は、鼻毛がフィルターの役目をし、ウィルスや細菌を通過しにくいですが、口呼吸の場合はウィルスや細菌が直接喉に到達し、風邪をひきやすいだけでなく、口腔内が乾燥して口臭の原因にもなります。また、口を開いたまま寝るといびきをかきやすく、睡眠の質が落ちる原因にもつながります。

 

【咬唇癖、吸唇癖】

上下の歯に水平的な距離ができると、前歯の先端に口唇が接するため、吸ったり咬んだりしやすくなります。そのまま習癖へ移行し、咬唇癖、吸唇癖となります。

【構音障害】

サ行、夕行、ナ行、ラ行は舌尖を上顎につけることで発音できますが、開口や舌突出癖があると舌尖を上下前歯の間から出すほうが発音しやすくなります。英語の「th」の音に聞こえたり、舌足らずな音に聞こえます。

【舌突出癖・異常嚥下癖】

開咬になると、上下の歯の間に隙間ができるため、隙間を埋めようとして舌を前方に押す行為 (舌突出癖)が生じます。また、 嚥下時には隙間により唾液や食べ物が飲み込めないため、閉鎖腔を作ろうと舌で塞ぎます(異常嚥下癖)。

 

【偏咀嚼】

上顎歯列弓が狭窄すると上下の幅径が合わず、下顎を左右どちらかにずらすために正中の偏位が生じ交叉咬合となります。
交叉咬合とは、前歯のでこぼこにより部分的に上の歯より下の歯が前に出て、かみ合わせが反対になってしまっている状態です。顎がずれると、ずれた側が咬みやすくなり、偏咀嚼を生じます。偏咀嚼をしているほうの筋肉は緊張し、反対側は弛緩することでさらに顎がずれて顔が歪んだようになります。そして、将来的に顎関節症の原因になります。

【低位舌】

本来、安静時や嚥下時、舌は口蓋に接しています。高口蓋になると、上顎骨の形態的異常により舌が上位で維持できなくなって下がり、低位舌となります。開咬になると、隙間を塞ごうと、舌が上下の歯間に置かれることが多くなります。また、吸指癖がら長期化すると、指によって舌が下方に抑えられる時間が長くなり、低位舌が起きます。

【審美的影響】

反対咬合、上顎前突になると、自分の口元が気になりコンプレックスになる子どもがいます。保護者のなかには自分の子どもがやめるべき年齢になってもまだ指を吸っているという行為より、むしろ容姿が気になっているという方もいます。

 

口元と側貌への影響

指をしゃぶっている時に緊張している口腔周囲筋は、吸っていない時に緊張がゆるみ、ぽかんと口唇が開いたままの状態になります。つねに弛緩した状態で上唇は短く山型の状態になります。

 

皮膚への影響

指しゃぶりによって指の吸いダコ、指の“ふやけ”ができたりします。また、口呼吸が習慣化することで口唇乾燥が起きます。

 

 

吸指癖(指しゃぶり)はどのような影響を与えるか

まず、吸指癖が子どもの発育に与える影響にはどのようなものがあるのか、詳しくみていきましょう。

吸指癖があるすべての子供に口腔内への影響が出るわけではありませんが、長期間続くほどその影響は大きくなります。具体的には、①歯列・咬合への影響、②口腔への二次的な影響、③口元と側貌への影響、④皮膚への影響などがあります。

①歯列・咬合への影響

指しゃぶりが歯列や咬合へ関わる要因として【表1】のようなものがあげられ、これらにより、影響の出方は異なります。また、そのほか、骨の硬さや筋肉の強さ(年齢にも関連する)、遺伝(持って生まれた顎顔面骨格型)なども関係します。具体的に歯列や咬合にどのような影響が現れるかみていきましょう。

【表1】歯列・咬合への影響する吸指癖の要素

○指しゃぶりの仕方(親指または他の指をどの向きでどこまで深く入れるか)
○頻度(寝付く前だけ、泣いた時だけ、日中も暇なら常に…など)
○どのくらいの時間吸っているか
○吸う強さ
○継続して吸っている期間など
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歯列弓狭窄(V字型歯列、高口蓋)

 

長時間、指を吸う圧が強いと、頬の筋肉が臼歯を内側に押すために左右の臼歯間距離が短くなり、歯列の幅が狭くなります(歯列弓狭窄)。そのうえ、上顎前歯を前方へ押す力が加わるとU字型の歯列がV字型に変化します。そして口蓋のくぼみが深くなり、高口蓋になります。

歯列弓狭窄

 

 

親指を口腔内の奥まで入れ、側方から強く吸うことで頬の筋肉が乳臼歯を内側に押し、上顎の歯列弓が狭窄。

 

V字型歯列

親指を浅く強く吸うことで側方からの持続的な圧と、前歯を前方に押す力によりV字型となった上顎歯列。

 

高口蓋

 

 

歯列弓の狭窄により深くなった口蓋のくぼみ。

 

 

開咬

 

指の腹面と背面が支点となり、上下顎の前歯部を歯根方向に上下させるために、上下前歯の間に隙間ができ開咬となります。臼歯部は咬んでいるのにもかかわらず、前歯部が上下で接触しないために、前歯で噛み切ることができない状態です。

 

反対咬合

 

人差し指や中指を1本または2本の指で下顎前歯に引っかけて吸うと、指の腹面で下顎を引っ張るために下顎を前方に誘導する力が加わり、下顎前歯の唇側傾斜を引き起こします。(前歯部反対咬合)

 

上顎前突

 

親指腹部を上に向けて吸うパターンがもっとも多くみられます。右図のように親指の腹を吸うことで上顎前歯が前へ押されるため、唇側に傾斜し、歯根方向に圧下されます。親指の背面が下顎前歯と接触することで、下顎前歯は舌側に傾斜します。

 

正中偏位、片側性犬歯部/臼歯部交叉咬合

 

上下歯列弓の狭窄により上下の歯列の幅径が合わなくなった結果、乳犬歯が早期に接触して咬合時に干渉するため下顎を横にずらして咬合するようになります。その結果上下の正中がずれ、犬歯部が交叉咬合になります。

歯科衛生士 S.A 歯科助手・TC Y.T

 

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